LOGIN女たちの顔が強張る。しかし、直之の援助の件もあり、一人が声をあげた。
「だからって、最初から窃盗犯にする計画だったなんて知らなかった!」「私も」
「百合絵さんが本当に被害者だと思ってたから」
「そうよ」
「私たちまで利用したの?」
百合絵に今度は令嬢たちが攻撃の声を荒げる。
「ひどいわ!」
「利用なんてしてい
「本物の招待状なら普通に会場へ入れてしまうから、わざと偽物を送ったって言ってました。それで受付で止められたところをみんなに見せて、『本当は招待されてないのに勝手に来た女』にするって……」「やめなさい!」「そのあと直之さんとの縁談も嘘だってことにして、それからブローチを――」「やめてって言ってるでしょう!!」 百合絵の絶叫が響いたが、しかしもう遅かった。 直之は怒鳴ることすらせず、冷えきった目で百合絵を見つめていた。「これでも、間違えて送ったと言うのか?」「……」 もうなにも言うことができなかった。「百合絵、もう終わりにしよう」 その言葉が、心を砕いていく。 終わるってどういうこと? なにを? 認めたくない。直之を瑠理子に盗られたくない! どうしたらいいの。 どうしたら止められるの――「偽の招待状を送って瑠理子をここへ呼び出した。受付で恥をかかせ、僕の婚約者を名乗る嘘つきに仕立て、ブローチとカメオを仕込んで窃盗犯にしようとした。さらに大勢を煽って暴力まで振るわせた」 直之は一度、赤く腫れた瑠理子の手へ視線を落とした。 その瞬間、再び激しい怒りが瞳の奥に浮かぶ。「全部、百合絵が仕組んだことだ」「……違う」「まだ言うの?」「違う……違うわよ……」 百合絵は首を横に振った。 けれど、もう自分でも何を否定しているのか分からなかった。
「わ、私は……本物だと思って……」「本物だと思った?」「そうよ!」 百合絵は、ようやく逃げ道を見つけたように声を張った。「私だって騙されたのよ!」「誰に?」「……え?」「誰から渡されたの?」「それは……」「財団職員? ホテル? 御堂家の誰か? 名前を言って」「覚えてないわ!」 百合絵が叫んだ。周囲から小さなどよめきが起こる。「覚えてない?」 直之は信じられないものを見る目をした。「御堂財団主催のパーティーの招待状を誰から受け取ったかも覚えていないのに、確認もせず瑠理子へ送ったのか?」「そうよ!」「へえ」 直之が招待状を見る。「ずいぶん無責任だね」「だって、本物だと思ったんだもの!」「でもおかしくない?」 直之はどんどん自分の揚げ足を取ろうと次々に質問をぶつけてくる。 これはかねてから愛していた直之じゃない。 どうしてこうなったんだろう。 やっぱり瑠理子のせい――「君は本物の招待状を使ってこの会場に入ったはずだ。瑠理子へ送ったものと全く違うのに、どうして気が付かなかったんだ? おかしいと思わなかったのか?」「そ、そんなところまで見ていなかったから……」「全然様式も違うのに? そんな注意力でこの先やっていけるの?」
「どうして離れるの!? あなたたちだって瑠理子ちゃんを責めてたでしょう!?」 女たちの顔が強張る。しかし、直之の援助の件もあり、一人が声をあげた。「だからって、最初から窃盗犯にする計画だったなんて知らなかった!」「私も」「百合絵さんが本当に被害者だと思ってたから」「そうよ」「私たちまで利用したの?」 百合絵に今度は令嬢たちが攻撃の声を荒げる。「ひどいわ!」「利用なんてしていないったら!」「したじゃない!」 彼女たちの声が大きくなる。「ブレスレットで煽って!」「暴力までやらせて!」「都合が悪くなったら全部私たちのせいにしたでしょう!」 おかしい。 さっきまで瑠理子へ向けられていた攻撃が、今。 百合絵(じぶん)に返っている。「百合絵さん、酷すぎる」「信じられない」「友達だと思ってたのに」「私たちを捨て駒にしたんだ」
「報酬はあったのか?」 直之が聞いた。「はい……五十万円です」「受け取った?」「はい」「現金?」 警備員が頷いた。「どこで?」「同じ地下駐車場で」 百合絵が叫ぶ。「現金なんて証拠にならないでしょう!」 直之がゆっくり振り返る。「ずいぶん詳しいね」「……え?」「僕はまだ、現金に証拠があるなんて一言も言ってないけど」「……!」 百合絵の口が閉じた。直之は警備員へ尋ねる。「封筒は?」「残しています」「中身も?」「……まだ一円も使ってません」「なら後で警察へ渡して」「はい」「ちょっと!」 百合絵が焦った声を上げる。「待ってよ!」「何?」「そのお金が私からだって証明できないでしょう!」 まだ逃げようとするのか――直之は小さく息を吐いた。「本当に君は最後まで諦めないね」「だって事実だもの!」「じゃあ」 スマートフォンを操作する。「地下駐車場の映像も出そうか」「……!」 百合絵が固まる。「三日前の午後七時過ぎ、警備員と百合絵が接触している映像が残ってる」「……」
「……話します」 長い沈黙の末、警備員が低い声で言った。百合絵の肩がびくりと跳ねる。「待って!」「百合絵」 直之が睨む。「黙ってろ」「でも!」「次に邪魔したら、会場の外へ出てもらう」「……っ」 直之の言葉に、百合絵は唇を噛んだ。 警備員へ視線が集まる。「まず確認する」 直之が尋ねた。「御堂家のカメオを、保管場所から持ち出したのは君だね?」「……はい」 ざわっ ざわっ 会場が揺れた。「やっぱり……」「警備員が?」「じゃあ瑠理子さん、絶対盗めないじゃない」 男は顔を上げられない。「いつ持ち出した?」「パーティーが始まる……一時間ほど前です」「どうやって?」「私は警備担当なので、バックヤードへ入る権限がありました」「なるほど」 直之の目が鋭くなる。「だから君が選ばれたのか」 警備員の指が震えた。「違う?」「……違いません」「誰に選ばれた?」「……」 百合絵が息を止める。(バラしたら承知しないから――!!)
その名前が出た瞬間、会場の空気が凍りついた。 百合絵の顔から、すっと血の気が引く。 しかし、次の瞬間には、激しく首を横に振っていた。「嘘よ!!」 甲高い声が響く。「この女、嘘をついてる!」「嘘じゃありません!」「だったら証拠を出しなさいよッ!」 百合絵が女へ詰め寄る。「私がいつ、そんなこと頼んだの!?」 女の髪の毛を掴む勢いだ。「百合絵」 直之が低く呼ぶ。「黙ってろと言ったのが聴こえなかったのか」「でも!」「彼女に圧をかけるな」「圧なんて……!」「じゃあ、そこで静かに聞いてろ」「……っ」 百合絵の足が止まる。 直之は再び女へ向き直った。「詳しく話して」「……はい」 女は震える手を握り合わせた。「数日前に……百合絵さんから連絡が来たんです」「どんな内容?」「御堂財団のパーティーで、瑠理子さんに少し恥をかかせたいって……」「恥をかかせたい!?」 百合絵が声を上げる。「そんなことは言ってないけど!」 直之が睨む。「黙ってろと言った」「……」 百合絵は口を閉ざす。 女は続けた。「最初は、私もここまでのことになると思ってませんでした」「……」「百合絵さんは、瑠理子さんが直之さんの婚約者だって勘違いしてるから、現実を教えてあげたいって……それで……」「違う!」「百合絵!」 直之の叱責が飛ぶ。百合絵が黙った。「続